「Magical Sweetie」
「しっ!今寝たところですから声を小さく」
中尉の膝の上にはよりによって鋼のが寝ていたのだ。
呆然と立ち尽くしてしまった。
いつかは中尉の膝で寝てみたいと思っていたのに鋼の先取りされるどころか私を差し置いて熟睡しているのだ。男なら誰も黙ってみてられない状況でどう話せばいいのか・・・
「ひゅー・・・・・大将ヤルっすね〜」
声の主を睨みつけてやると怯んだのか後ろにさがった。
「中尉、その・・・・?」
先ほど声を小さくと注意されたので小声で喋る。
チッまるで私が悪い事してるみたいじゃないか上司なのに。
「大佐が会議に行っている間に空き時間ができたのです。それで部屋に戻ってみれば待ちくたびれてるエドワード君がいまして、空き時間にいつもの耳かきをしているうちにこうして寝てしまったのです。」
わかってはいるもののこうして聞くと余計に腹立たしい
「ププッ大佐、大将にナニ腹たたててるんすかぁ〜?」
さっきはひと睨みで後ろにさがっていたのに余計な事ばかり言いやがる。
「あ、私は手が離せないのでお茶は自分でなさってくださいませんか?」
「ハボック、貴様がやれ!」
「へいへい」
返事を無視したように中尉と向かいのソファーにどっかり座り腕組みをして二人を眺めた。
「・・・そう思えばブレダやファルマン達は?」
冷静になればいつもとは違う事を思い返した。
この時間ではそれぞれが机に向かって書類を作成したり電話の対応に出たりと忙しいのにこの静けさはありえない。
「ええ、フュリー曹長は修理に出てくるからしばらく帰ってこないとか皆仕事に忙しいらしくさっきで払ったばかりですが?」
「出払った」と言うよりもこの状況で八つ当たりされるのが嫌で「外に出て行った」と言うのが本音だろう。
「アルフォンスも、か」
「ええ、錬金術でどうにかして欲しいとブレダ少尉が連れていきました」
ふん、徹底して逃げてしまったか。
「ご不満のようですが何か?」
不満は、ある。
こんな小僧に一番いい席を取られるばかりか、女なんていつでも自由にできる自分がこんなところで席を眺める立場になろうとは・・・・・・
「不満は・・」
「た〜い〜さ!大将に中尉の膝をと」
「ええい、うるさ」
「静かに!」
一同の目線は膝で寝てるエドワードへと向かう。
「むぅん・・・・・・・くぅ・・・・・・ ・ ・か」
寝言を言うと頬を膝にすり合わせまた深い眠りの中に落ちていった。
3人はホッと胸を撫で下ろし覗き込むようにエドワードの様子を見守っている。
「ホントに大将はよく寝てますねぇ〜」
ハボックは先ほど注意されたので小声で言いながら目の前のテーブルに2つコーヒーを置くとしゃがみ込みエドワードの寝顔を覗き込む
全くだ、こんな贅沢な膝枕で寝れないなんてありえん。
「徹夜してこんないい天気だもの眠くなるわよ、ね?」
不意に中尉の口元が上へ弧を描くように笑った。
普段から笑う事も無く冷徹でスキが無い女性のフトした微笑はどんな男でも魅了してしまう。ここにいる男二人も例外なく、女神の微笑みで胸の中の男心をノックしたような気分だ。
もう、目線は寝ているエドワードではなく膝枕をしている中尉に釘付けで目が離せない。
ハボック少尉に至ってはうっすらと顔を赤くしている。
「・・・・・ほ、ホントにいい天気だ、な・・・」
場の空気がいつもと違うので一言が言いにくい。
「と、・・・ころで・・その、いつも耳かきを・・・・?」
さっきから気になっていた言葉だったので空気を変えるために聞いてみた。
「あら?ご存知ありませんか」
「えっ大佐は知らないんスかぁ〜?」
・ ・・なんだ、この温度差は。
「あぁ、そう思えば大佐が会議とか視察とかで席をたってる時に大将の時間潰しにこうやって中尉が世話をしてるんっス」
道理で私だけ知らない訳だ。
「最初は照れて嫌がってましたけど、お菓子とかを出すと喜んで来てくれるようになりまして今ではこうして懐いてくれるんですよ」
「そうそう、アルのヤツが無理やり押し付けたりして観念したんすかね〜今では爪を切ったり髪の毛をブラッシングしたりっすよ」
・・・聞けば聞くほど胸の中からイラつくのは相手が鋼のだからではなく男して当たり前だと思いたい。
「中尉、私に」
「駄目です。ご自分でなさってください」
軽蔑した目線で中尉に言われた。
「大佐の場合家に帰れば電話一本で彼女達がカイガイシク尽くしてくれるんじゃないすかぁ〜?」
部下の言っいている事は事実だが、中尉と同じ目線で答えられて引っ込むような性質ではない。
「命令と、言っては駄目かね?」
目と口元を涼しげに笑っておどけているが内心かなり必死だ。
「大佐の爪を見てください、いつも綺麗に揃って切れてるじゃありませんか。耳も綺麗に掃除されるようですし何の不服が?」
ピリッとした空気が4人を包む
要するに拒否をされているという事だ。
ハボックは横を向いて手で口元を隠して笑っている。
クソッ!昨日美容院で勤めてるカトリーヌの家に遊びに行ってきたばかりだった。
「いや、しかし」
「これ以上切って深爪、なさりたいんですか?」
中尉の目線が刺さって痛く居心地が悪い。
彼女達は声さえかければ至る所まで尽くしてくれるがこの中尉とは部下と上司以上の関係も無ければ好意でさえ全く無いそんな仲なのでやり取りをしていても取り付く島さえない。
まぁ、ソレが中尉のいいところでもあるが少し寂しい気もしている。
ため息をつくと中尉から何かしてもらおうと考えるのはどうでも良くなりやめた。
「ほぉ〜んと、平和っすねぇ〜・・・・」
言葉通り平和で日差しも心地よく和やかだ。
外を見れば木が風に揺られている。
「大佐、今日中に書類を5枚と判子を押して出していただきたいのですが?」
「君ね、もう少しぐらい休憩してもよかろう?」
「休憩と言いながら結構な時間が経っています。もうそろそろ腰を上げて仕上げてしまわないといつもの定時には終われません」
定時に仕事が終われないのは不本意だ。
それに会議が終わったのが3時で今の時間を見てみるともう半近くなっている。中尉が急かすように言うのも無理はない。
「では、仕方ないな!」
冷めたコーヒーを飲み下すしソファーから立ち上がろうとすると声がした。
「うぅ・・・・ん〜・・・・?」
しまった。さっきの声が大きすぎたのか
声の持ち主は薄ら目を擦っている。
ハボックや中尉の顔を見れば「しまった」という顔をしていた。
「あ、あれぇ〜・・・・?」
「エドワード君、起こしてしまってごめんなさいね」
エドワードは顔をあげると中尉の膝から起き上がり大あくびをしている。
「中尉ごめん寝てた?」
「いいのよ旅で疲れてるんですもの。」
鋼のに向けてる優しい笑顔をこっちにも向けて欲しい。
体を伸ばしてやっと目が覚めたところでやっと声をかけてきた。
「ハボック少尉と・・・大佐?会議は終わったのか」
目の前にいる恋人なのに最後に呼ばれるのは嫌味なのかしかも疑問系で。
「君も起きるなり随分な言いようじゃないか」
「随分って言えたことかよ。アンタ煩すぎ!人が寝ているのにウダウダ言ってるから目が覚めただろ!」
部下の冷めた目線がかなり痛いが無視して話を続ける。
「覚めてよかったじゃないか?で、今日は報告書かね?」
わざと突き放つように言った。
鋼のは顔を引きつらせ眉間に皺を寄せている。コレは言いたい事を今でも爆発したい前兆だ。部下達にこれ以上冷たい目線で見られ軽蔑されるのはいただけないのでもうそろそろ執務室に行こう。
「ではこっちに来たまえ。」
先に歩き出すと鋼のも後をついてくる。
「おう!」
さっきまで熟睡したいたのに勇ましい掛け声だな。
等とぼんやり考えながら部屋の扉を開ける。
「中尉、すまないが熱いコーヒーを2つ頼む」
「はい」
「ハボック、お前のは温くてマズイ!」
「ちょ!アンタッ!入れて時間が経っていたでしょーが!なのに人の」
無駄口は聞きたくない。
鋼のが部屋に入るとハボックの愚痴を聞かないうちにドアを閉めた。