Magical Sweetie


「アンタさぁーなんか機嫌悪い?」

書類をチェックていている上司の仕草をみてつい言ってしまった。

いつもはどんなにいやな事があっても顔色一つ出さずに嫌味ばかり言っている奴なのに今日は妙に険しい表情をしている。

表情さえも変えず依然として手元の書類に目を通しながら答えた

「はっ!まさか何に機嫌が悪いと言うのだというのだね?」

「なににって・・・・わかんねーけどいつもと違うじゃん?」

 

そう、いつもと違う。

 

いつもはからかい半分に意地悪な事ばかり言うのに今日に限って無言で書類とにらめっこしている。こんな事言うとコイツはつけあがるから何がどうとまで言えないもどかしさがエドの胸の中を渦巻く。

 

一体何が原因なんだ・・・?

考えてみてもまさか自分に非があるとは思えない。

オレが起きた時にはコーヒー飲んでいて・・・なんか少尉にマズイとか言っていたからソレか・・・?いや、コーヒー一杯で機嫌なんか悪くなるわけがない。俺が待っている間会議でなんか文句言われたとか?

コレもありえない。文句言われても相手が泣き目を見るまで徹底的に応酬するタイプだし。

 

「何、こっちをみているのだね?」

「え?」

「眉間にしわ寄せているじゃないか」

 

はっと気が付くと大佐ばかり見ている自分に気が付く。

「ばっ・・・!ちげーよ!!何であんたなんか・・・」

「そんなに私の事が気になるのかね?」

意地悪く口元を歪めるが、目は笑ってない。

 

うわあ・・・なんか嫌な予感。

 

ソファーの上に座っていたが、重たい雰囲気にのまれそうで嫌だ。

言ってしまえばいいけど絶対からかわれる。

 

「うん?どうなのだね」

 

促すように言うなよ。

コレじゃどっちが機嫌悪いのだかわかんねーよ!

 

「だって・・・」

 

今はコイツの顔を見たくない。

つい下を向いてしまうがココで目を逸らしたらまた何か言われそうだから顔を目で追いながら見ている。

 

「オレが起きてから大佐さ、なんか変だから・・・気になって。」

 

「つまり私の機嫌が悪いから原因を考えていたと言うのかね?」

 

自分で言うなよ、この野郎!

ってかさっきからずっとコレばっか聞いているじゃん。

 

「・・・考えてワリーかよ・・・」

 

蚊の鳴くような声を絞り出したとたん

今まで険しかった顔が今度は大きな口を開けて笑い出した。

 

「わっわらうなああああああああ!!!!」

恥ずかしさのあまり席を立って睨みあげる。

 

「くそっ!だから言いたくなかったのに原因を作ったアンタが悪いのに何で俺がこんな恥ずかしい目に・・・」

「墓穴を掘って・・ははっ!君には参ったよ」

 

エドはため息を吐くとまたソファーに座り込んだ。

 

さっきまでの機嫌の悪さはどこへいったのか。椅子を回転させて机に向かわず胸の前で手を組んでほころぶ口元と神秘的な黒い瞳がこっちを見ている。ココから見ると逆行になって暗く見えるが反比例して表情は明るい。

 

「・・・大佐さっき参ったって言ったよな?降参したなら教えてくれるのだよな?」

「わかったわかった、君は赤くなったり青くなったりして悩んで忙しいな」

「誰のせいだよ・・・・」

 

呆れた声で言ったものの目の前のコイツに躍らせられている。

 

「君はいつも中尉と居るのが少々微笑ましくってね・・・」

 

はぁ?何言っているんだコイツ・・・・・・・・・

 

「耳掃除もやってもらえるなんてこの軍部内では君ぐらいだよ」

俯きため息をつくのがうざい。

 

つまりこういう事だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・羨ましいんだ?」

 

いつも女には困らないとか少尉や軍部の噂では知っていたけどいくら中尉までは思うようにならないから中尉に構って貰っている俺が羨ましくてしょうがないのだ。

 

女好きだとは知っていたけど今の恋人は俺のはずなのに。

 

「浮気もの」

ギクッとして顔を外の景色の方に背ける。

 

その仕種がうざいと思うよりももっとささくれだって苛立ってしまう。

 

「いや、言いたいのは違うんだ」

 

そんな言葉を聞きたいんじゃなかったのに。

 

「やっぱ、なんだかんだって裏切るのはアンタが先じゃん・・・」

言い訳が波紋を呼び、どんどん不信感が広がっていく・・・・・・・・

「鋼の!私はただ君に」

 

「なんなんだよ!!!!」

気持ちが高まってもう止まらない。

 

「大佐の薄情!浮気もの!変態!馬鹿!無能!死んじゃえ!!」

またソファーから立ち上がるとさっきまでの怒りとは桁違いに怒鳴りあげてしまった。

 

「・・・・ただ君に耳かきしてもらいたくって」

 

「・・・・・・・はぁ?・・・・・・・・・」

 

何でそんな話になる?

今までの話だと女の人に構って貰っていたのにたまたま俺が中尉の耳かきに嫉妬したのかと思っていたのになんで話をすり替える。

 

「鋼のが耳かきして寝ている姿を見ていると気持ちよさそうだからつい私もやってもらいたくってね・・・・」

 

立て続けに一人で喋っているのがまるで頭に入らなくて、口を開けてポカーんと放心状態だ。

 

「・・・・だから今のうちに耳かきしてもらいたいのだが?」

 

「なんで俺がする話に・・・」

「君と私の関係は恋人じゃないか」

 

恋人って言葉に惑わされそうにいる自分がいる。

ココはグッと堪えて言い返さないとうやむやになってしまう。

 

「それはそれ、これはこれ!話を変えるな!」

 

「おや心外だね別に変えてもいないし微笑ましいと私は言っただけだがね?・・・それとも私が浮気したのかと嫉妬しているのかね?」

今度は嫌味なぐらい余裕たっぷりだ。

 

顔色はさっきまでと明らかに違って勝ち誇ったように涼しげな表情

勢いで立ち上がっていたのに今度はこっちが空回りして心もとない雰囲気になってしまった。

 

確かに「微笑ましい」とは言ったけど「羨ましい」等とは言ってないしついカッとなってしまったのも自覚している。

(何だか怒っているのが虚しくなってきた・・・・・・・)

 

「浮気したならその証拠もないじゃないか・・・いい嫉妬してまいしたと認めないのかね」

 

そう言って今度は座っている椅子を外の方に向けて俺を見ないようにした。

 

「証拠・・・・・・は無いけど・・・嫉妬なんか」

この広い空間の中に居るのににこっちをみて話さないといかにも切り捨てられたような寂しい気分が沸いてきた。

声も最初は大きくてもだんだん小さくなり言い言い訳がましくなる。

 

「男同士で実感は無いだろうけど、仮にも恋人同士なのにそんな言い方されると傷つくね」

 

コイツが恋人を連発するたびに嘘臭いのは俺だけじゃないはず、だ。

でも今は状況が違う。

なんなんだよ・・・・・・・・・

「俺にどうしろって言うんだよ・・・・」

 

拗ねるように小さい声で呟くと大佐は椅子をまたこちらに向けて

おどけたように両手を広げて肩をすくめると一言言った。

「あ〜傷ついた!鋼のがお詫びに耳かきすると解決するんだがな」

 

「アンタ・・・さっきからそればっかじゃん・・・・・・・・・・・・」

 

いい大人が14歳したの子供に拗ねて心底呆れた。

その反対に今までカッカきていたのが馬鹿馬鹿らしくなりどこに力を入れて怒鳴っていたんだかわからない。

 

「耳かきは別にどって言うことないけどさぁ〜仕事をサボると中尉におこられるんじゃ?」

 

「書類は今日中の締め切り分は済ませてあるし、鋼のが心配する事は全くない。それに君は予告も無くすぐに度に出てしまうからやるときにやらないといつできるんだか・・・」

 

「はいはい、くだらねー言い訳は耳が腐る」

 

もうグタグタ言ってるのがうっとうしい。

またソファーに座ると今度は大佐がほころんでいくのがみるみるうちにわかっていく。普段は職業柄か表情も一切表に出す事無く飄々としているのからこの瞬間は素直に嬉しくなる。

現金だとは思っている。だけど、俺にしか見せてないだろうと思うこの男の緩んだ顔が好きだ。

(は、俺も馬鹿だな)

 

「そこでグズグズすんなよ!耳かきとかティシュとかてめぇが持ってこいよな!」

指先でビシッと大佐を指す。

 

「分かっているよ、でも鋼の上司にそんな言い方は無いだろう」

 

「ふぅ〜ん・・・俺、用事思いだ」

 

ちょっと拗ねたように言うとすぐさま大佐が割って入る

「いや、そんな事より耳かきだ!」

 

「他には?」

冷たい目線ソファーにふんぞり返ってやる。

少し間があいたが目の前に大佐は耳かきとティシュを目の前に出した。

 

「『お、お願いします・・・?』でいいだろう」

大佐の口元が少しつりあがり屈辱感いっぱいの様子にちょっと満足した。

 

「しゃーねーなー!!じゃ、ソコに寝転がれ!それと変なことしたらその場で鼓膜に穴あけて中尉に言いつけるからな!」

 

照れ隠しに頭を掻きながらぶっきらぼうに言ったとたんに大佐はソファーに上がりこみ俺の腹のほうに顔を向けて耳を差し出す。

相変わらず顔が妙ににやけて普段の大佐とはちょっと違って見えるような気がする。

 

(あー何だか俺よりもトシ食っているけど体だけでかい弟みたいな感じ)

 

「は〜が〜ね〜の〜」

 

色々考えていると今度は大佐から催促の声が来た。


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